株式会社岩戸精米 代表取締役 佐藤亮次さん インタビュー(武田航太朗 選手) 先祖から受け継いだ棚田米/初代の名前を商品名に

  • 2026/04/09

高千穂町ふるさと納税の返礼品として、棚田の味をそのまま届けている「株式会社岩戸精米」。
江戸時代初期から13代にわたり受け継いできた棚田米「長右衛門米」に込めた思いや、無添加にこだわったお餅作りの背景を探るべく、ヴェロスクロノス都農・武田航太朗選手が訪れました。

――会社を始められたきっかけを聞かせていただければと思います


高校を卒業後に進学して、その後は地方などを転々とする生活を何年間か送った後、地元の高千穂町に帰ってきました。もともと父親が精米業をやっていまして、工場を移転するから農協にお金を借りたいと相談があり、その時にたくさん借りたいからお前の名前を貸せということで連帯保証人の印鑑を押しまして。なんだか自動的にこの仕事をやり出した感じですね。やらざるを得なくなったということでしょうか。子どもの頃から農家のおじちゃん、おばちゃんたちが周りにたくさんいましたので、色々な感じでお付き合いをしてきたのですが、実際にこの仕事を始めて、この地域のおじいちゃん、おばあちゃんとあらためてお付き合いをすると、「高千穂っていいな」としみじみ思うようになりました。共に汗を流して、休憩時間なんかは本当に冗談交じりの話をしながら、棚田でのお米作りは本当に大変ですが、地域のおじいちゃん、おばあちゃんに支えられてきたなと感じています。何回も辞めたかったのですが、この仕事をなぜか知らないけどやり続けているという流れで、2022年に「株式会社岩戸精米」として法人化し、精米所の拡張や新事務所を設けて今に至ります。現在は自分が手掛ける四町歩の棚田で作ったお米と、地域の方が作ったお米を合わせ、年間450トンほどを取り扱っています。

――全国を転々としていたというのは?


東京で大工をしたりとか、色々なことをしてきたといいますか、これだというものが決まらなくて、なんだかちゃらんぽらんだったということですかね。地元に帰って来た時は、なんだか時間が止まっているような感覚がありました。なんだか置いていかれるのではないかとも感じ「自分はこれでいいのか」と少し不安を抱きながら生活を送っていました。でも時と共に「高千穂はこれでいいんだ」と思うようになって、自分自身の人生もこれでいいと思えるようになりました。それで、この「何もない」ということの中にたくさんの幸せがあるのではないかと思い始めてですね。なんだか悟りを開きました。ただ、やはり現実は甘くないというのが現実で、お米は昨年から価格が上がったりもしたのですが、実際もう暴落してきています。世の中にお米がたくさんありすぎて、また大変な時が来るなとかも考えながら、今のうちにこう頑張っておけばいい事があるのではないかなと思い巡らせながら米作りに関わっています。

――地域の方との関わりや魅力を教えてください


良くも悪くも、親戚のおじちゃん付き合いといいますか、悪く言えば田舎あるある。なんだか土足で踏み込んでくるといいますか、慣れてくると悪い人ではないのですが、地元に戻ってきた頃はそれが少しストレスだったですね。でもその輪の中に入ってしまうと、別に悪気があってそういうことを言っているわけではないというのが分かり始めて、逆に仲良くなりたいんだなと。そんな支え合いの心がこの地域の魅力の一つだと思います。

――先祖の方が元禄年間に米作りを始めて佐藤さんで13代目ですね


家に巻物がありまして、江戸時代の初期に先祖の長右衛門さんという方が始められ、それから絶やすことなく代々棚田を守ってきたことが記されています。辞められていく農家さんも多い中、いかにこの棚田を残していくか、過去の人たちの事を考えさせられます。江戸時代でもその前の時代でも、この棚田と共に生きてきた先祖がいたのだなと深く感じ、先祖を敬うと同時に今後も棚田と共に高千穂のお米を残していけたらと思っています。そういった思いで、先祖の長右衛門さんの名前を取って「長右衛門米」という商品名にしました。

――米作りのスケジュールを教えてください


5月末から田植えをして10月に入ってから収穫が本格化します。年間を通して作業はありますが、田植えの前には主に畔塗りといって田んぼの法面を作ってやる作業があります。それをやることで水を張った時に水持ちが良くなります。宮崎市内の方はブロックを積んだりしますが、ブロックを積むと機械を傷めるので昔ながらの工法でやっています。高千穂の棚田は草刈りが特に大変ですね。畔ならいいのですが、法面になっているところの草刈りは労力を使います。

――近年の温暖化の影響はいかがですか


主力のヒノヒカリは高温障害といって暑さに少し弱い品種です。暑いとお米が急成長してその時に空洞ができて、白太といいますか、普通のコシヒカリとかと比べると白く見えたりします。現在のところそこまで大きな影響は出ていませんが、新品種も出来てきたような話ですのでそれにも少し期待しているところです。でもまあヒノヒカリが味はやはり一番良いです。

――棚田での米作りは苦労も多いですね


棚田を残せ、残せと県の方とかは言われるのですが、正直、農業として考えると厳しいところがあるというのは感じています。ただ、山腹用水路からの岩清水、高千穂牛から作られた堆肥による土づくり、棚田だからこその作業の苦労を重ねて作られた質のいい棚田米は売りになると思っています。例えば宮崎県というと正直お米のイメージがあまりないですよね。でも東京のバイヤーさんが来て、「一度食べてみてください」と提供したら、「美味しい」と喜んでくださり、ECショップとかで全国各地から注文が来ました。そういった流れをどんどん広めていきたいし、地域で広めていってほしいなと思ってます。

――ヴェロスクロノス都農ポータルサイトに期待していることはありますか


スポーツ選手にはとにかくこの宮崎県の元気の良さを、ECショップやふるさと納税を通して伝えてほしいなと思っています。少し余談になるのですが、2年ぐらい前に「親戚ですって」と言って急に来られた青年がいまして、この青年がプロのラグビー選手でした。その青年がインスタとかで発信してくれて、少し売れ行きが良くなったりしたので「あ、こういうことだ」と思いました。

――ふるさと納税の返礼品で提供している商品の魅力を教えてください


魅力はやはり棚田の味をそのままお届けするというところですね。宮崎県というと温暖な気候と言われますが、高千穂町というのは雪も積もりますし、年間の平均気温というのは実は東北地方と同じです。寒暖の差が激しいというのは、人間としては生活しにくいということですが、お米にとってはものすごく良いということです。また300m以上の標高があるところで育っている稲というのは、味や旨味が凝縮すると言われています。

――最近はお餅も作り出したと聞きました


棚田の味をそのままというコンセプトでやっているので、味付けとかをしてしまうとなんだか違うなと思い、無添加で作っています。最初は簡単に考えていたのですが、無添加イコールカビとの戦いでした。加工場に1800万ぐらいかけてしまったのでやばいと思って、メーカーの営業マンの方から色々とアドバイスを貰いながら必死になって、ようやくカビが生えないやり方を見つけました。お餅自体ではなくて、切る時の粉これにカビがいたのです。これをあることをすることによって、カビの菌がいなくなって賞味期限もグッと延びました。普通の白餅とあえて胚芽を残して精米したもち米を使ったお餅を作っています。胚芽というのはお米のポコッとしたところで、ビタミンB1などの栄養がものすごくあります。お米と併せて販売に力を入れていきたいです。

――返礼品を受け取った方からの反響で印象に残っていることやエピソードなどはありますか


昔ながらの田んぼの味がお米の味がすると、特に餅では言われましたね。ECショップだったかと思いますが、家内が最初売れない時に一人一人に手紙を書いていました。そのちょっとした心配りに「めちゃくちゃ嬉しい」などの返信があり、そういう思い、やはり思いは届くのだなと感じました。

――返礼品を通じて寄付者の方にどんな体験や喜びを届けたいというのはありますか


先ほどの話に戻りますと、北海道の方が返礼品を通して私たちのお米を食べて高千穂町まで遊びに来てくれたことがありました。手土産まで持ってきてくださって「どちらからですか」と聞いたら「お宅の米を買っている者です」みたいなことを言われまして、びっくりしました。自分たちの商品を通して高千穂町のファンになってくれるというのはやはりやりがいを感じますね。

――最後に今後挑戦したいことや目標などを教えていただければと思います


私たちは生産者の思いをお米を通して詰めていると思っています。自分たちもお米を作っているのですが、生産者それぞれの情熱とか思いが詰まった商品を作ってみたいなと思っています。品種などは一緒かもしれないですが、生産者それぞれで思いはきっと違うと思います。難しいかもしれないですが、色々な生産者の顔が見えるふるさと納税の返礼品を作れたらなと思っています。もっと欲を言えば、定期便で売れて、ひいては高値で仕入れられるといいですね。そうすることで生産者が来年も頑張ろうという気持ちになる、そういった流れを作っていきたいです。



【株式会社岩戸精米】
〒882-1101 ​宮崎県西臼杵郡高千穂町三田井4968-7
TEL:0982-74-8728



武田選手取材後コメント
今回は株式会社岩戸精米の佐藤さんにお話を伺わせていただきました。
先祖代々受け継がれてきた棚田を守りながら、地域の人々と支え合って歩んでいる姿がとても印象的でした。
関わる人たちとの日々の交流の中に温かさがあり、その積み重ねが今の仕事につながっているように感じました。
また、佐藤さんの明るく気さくで話しやすい人柄も印象的で、取材全体を通して終始和やかな雰囲気の中でお話を伺うことができした。
現場の苦労や葛藤も率直に語りながらも、どこか前向きさやユーモアが感じられ、地域での暮らしや仕事を楽しんでいる様子が伝わってきました。
棚田米の美味しさをまっすぐ届けようとする姿勢や、無添加の餅づくりに向き合う真摯な取り組みからは、ものづくりへの丁寧さが伝わってきました。
お米を通して人や地域の魅力を届けたいという想いにも共感できる内容でした。

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